道路・鉄道線形計画システム「APS-MarkⅣ」
株式会社地清建設企画
所在地:宮城県名取市
設立:1979年6月
資本金:1,000万円
http://www.chisei-kk.co.jp/
宮城県名取市に本社を置く、株式会社地清建設企画は地域密着型の総合建設コンサルタント。
創業から設計・測量・補償技術を一貫して手がけており、地域のインフラ整備に日夜貢献している。
さらに顧客の満足度を高めるよう高品質な成果を収めるため、優れた人材の育成を積極的に行っており、現役社員の技術士/RCCMの連続合格をした実績があることから、多くの有資格者を抱えている。
そして今回、道路・鉄道線形計画システム「APS-MarkⅣ」を使用して、道路線形および交差点の3次元モデル作成という課題を達成された技術部の方々に、当時の状況や解決方法について取材を行った。
設計成果をそのまま3次元に
受注した設計業務(線形検討および交差点設計)には景観シミュレーション用としての3次元モデル作成が含まれており、まずは3次元モデルを作成できる道路設計ソフトウエアの選定からスタートしました。
設計後に3次元モデルを一から作成するのは非効率と常々思っており、設計段階で3次元モデルを簡単に出力できるソフトウエアの選定が大きな判断基準でした。
以前から使用している株式会社エムティシーの道路・鉄道線形計画システム「APS-MarkⅣ」(以下APS-MarkⅣ)は、これまで多くのバージョンアップを重ねてきており、最新バージョンでは線形検討中の設計データをそのまま3次元モデルに出力してくれます。
その機能を営業の方による製品デモで見たことがきっかけで、今回の業務でもAPS-MarkⅣを使用することに決めました。
まずは設計をしっかり
設計成果がそのまま3次元モデルに出力されるということは、なによりも設計がしっかりされていなければなりません。
実は3次元モデル作成以前に今回の業務は、平面線形が複雑な形状であることと、避けなければならないコントロール箇所が多いなどシビアな線形検討を求められる内容でもありました。しかし株式会社エムティシー独自の計算手法「エレメント固定法」(エレメント(線形上の直線または円のこと)に対して通過条件を指定し、固定されてないエレメントを順次固定する線形手法)を活用した結果、設計条件を満たしつつ理想的な線形を引くことができました。
例えば、IP法ではIP座標を移動するトライアルしか行えないため、曲線区間に通過要件がある場合トライアル回数が多く、非効率的です。
しかしエレメント固定法では曲線区間に通過点を指定できるので、トライアルが少なく済ませられます。
エレメント固定法を用いることで思い描いた通りの線形検討が自由自在にできるのはAPS-MarkⅣの大きな魅力の一つですね。

3次元地形モデルを活用した線形検討

エレメント固定法を使用した線形入力
テクスチャマッピング
地形の3次元モデルは国土地理院が公開している基盤地図情報データの数値標高モデル(標高のメッシュデータ(5mメッシュ))の使用を決めたのですが問題がありました。
ダウンロードした標高のメッシュデータは縦横断現況取得の際に役立ちますが、問題は平坦な地形であることと3次元モデルにしたとき、建物や既存道路・河川などが分かりづらい点でした。
そこで株式会社エムティシーの地形データの3次元化作業に特化した「現況高さ編集ソフト「APS-ZE」」(以下APS-ZE)を活用しました。
標高のメッシュデータをTINモデルに自動変換し、テクスチャマッピング(画像を形状の表面に貼り付ける)をさせることで、建物や既存道路、河川などが視覚的に確認できるようになりました。
APS-ZEは2次元図面を3次元化(高さ付け作業)するツールとして活用していましたが、バージョンアップを重ねることでテクスチャマッピング機能など3次元地形モデルを利活用する機能を備えており重宝しました。
ペーロケ作業の自動化
今回は土工区間があるため、当然ペーロケ作業が発生します。ペーロケ作業は平面図から地盤高・横断現況を一つ一つ読み取るため、長い時間を要する作業です。さらに線形変更があると、この作業を繰り返すので、より時間を要してしまいます。
そのためペーロケ作業の効率化は道路設計の中でとても重要なファクターでした。
しかしAPS-MarkⅣでは、地盤高・横断現況を平面線形と連動し生成してくれるので、縦断線形検討・法面展開が効率良く行えるようになりました。
初めてこれを見たときは非常に衝撃だったことを記憶しています。
ボタン一つで3次元モデル作成
当初の目的である3次元モデル作成は非常にスムーズに終わりました。細かな微調整はありましたが、ソフトウエア選定の決め手どおり、ボタン一つで容易に3次元モデルを作成することができました。3次元モデルの大きな利点は任意の位置・角度から現況地形と計画や、計画と計画との高低差を確認できる点ですね。おかげさまで交差点がある箇所も非常に分かりやすくなりました。
また作成した3次元モデルを発注者へ確認いただくためにソフトウエアを導入してもらうわけにはいきません。そこで株式会社エムティシーが無償で公開している3Dモデルビューアー「APS-3DViewer」を活用しました。これは株式会社エムティシーのソフトウエアで作成した3次元モデルを閲覧できる専用のビューアーです。このビューアーと作成した3次元モデルを発注者へ渡すことで、発注者もコストゼロで内容を確認することができます。それと動作が軽いビューアーのため、高性能なPCがなくても3次元モデルの内容を確認できるのもポイントでした。
交差点設計ソフトとの連動
線形3次元モデルの他に交差点3次元モデルも同様に作成しなくてはいけないのですが、その問題は交差点設計図化システム「APS-C」(以下APS-C)で解決しました。
APS-Cは線形や幅員構成など最低限の条件だけで交差点図を瞬時に自動作成してくれるので、交差点設計の効率が良くなりました。さらに線形や設計条件の変更に合わせて交差点形状がリアルタイムに更新されるので、設計ミスの防止につながります。
肝心の交差点3次元モデルですが、APS-MarkⅣと同じく、設計した交差点データからボタン一つで交差点3次元モデルを簡単に作成してくれました。さらにAPS-CからAPS-MarkⅣへ交差点情報の転送機能を使用することで、わざわざ3次元CADを使用しなくても、線形3次元モデルと交差点3次元モデルが一つの3次元モデルとして自動で統合されるので生産性が向上しました。
走行シミュレータで視距確認
3次元モデルから線形形状や地形との関連性を確認できますが、実際に走行した際のイメージは読み取れません。
そこでAPS-MarkⅣのオプションである走行シミュレータ「OP-ROAD」を使用しました。作成した線形データを読み込むだけで、実際に走行したような走行アニメーションを自動生成してくれるので、特に難しい操作は必要ないのがありがたいです。
生成された走行シミュレーションのおかげで、交差点部を含む視距確認や平面・縦断線形との調和の確認がスムーズに行え、走行シミュレーションは線形の照査や比較検討の際は非常に役立ちました。
最後にIT効率化の波がこれからどんどん加速して中で、ソフトウエアの活用を念頭においた設計業務の体制づくりが必要不可欠だと、あらためて考えています。

標高のメッシュデータに
テクスチャマッピングを適用

完成した3次元モデル
←戻る ↑ページ上へ ↑記事一覧へ