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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

現場の声をアプリに生かして現場改革 生産性と建設業界の魅力を高める取り組み

戸田建設株式会社

図面共有アプリ「CheX」/仕上げ検査支援アプリ「LAXSY」/巡回点検支援アプリ「AQuick」

戸田建設株式会社

     
本社建築工務部 生産システム推進課長 池端 裕之 氏 
丸岡 亜衣 氏 
(左から)

 
所在地:東京都中央区
設立:1936年7月(創業:1881年1月)
従業員数:4,078人(2019年3月31日現在)
主な業務内容:総合建設業
https://www.toda.co.jp/
 
 
 
 
 
 
 
戸田建設は、図面共有アプリ「CheX(チェクロス)」、仕上げ検査支援アプリ「LAXSY(ラクシー)」、巡回点検支援アプリ「AQuick(エークイック)」を導入する等、施工現場のIT化を積極的に推進している。背景には、生産性向上もさることながら、次世代に向けた建設業界全体の魅力向上が急務であるとの想いがあった。
施工現場の環境の改善に取り組む、本社建築工務部 生産システム推進課長 池端裕之氏と同課 丸岡亜衣氏にお話を伺った。
 
 

単なるペーパーレスを超えた「CheX」の活用

初代iPadが発売された当時から、戸田建設ではその先進技術の活用方法を模索していた。単なるペーパーレスという発想だけになりがちな中、池端氏らが目指したのはいわば「施工現場に勤務する若手従業員の視野拡大」だった。大規模な現場になると図面の量は膨大となり、全て持ち歩くのは物理的に困難である。上長クラスであれば、実行予算を組む際等に各種図面を横断的に見るが、若手になればなるほどその機会は少ないため、どうしてもその時点の工程に関係する図面だけを見がちになってしまう。結果、その箇所が最終的にどのような仕上げや用途になるか、他の工程ではどのような作業が行われるのか等を把握せずに現場に立ち、段取りや作業のミス等を早期に気が付くことができないといったことが起きていた。
 
全ての図面を持ち運ぶことができ、さらにメモや写真などを共有できるアプリ_この条件にマッチしたのが、CheXだったという。
 
CheXは、iPadで図面を閲覧できるだけでなく、図面上に直接メモを貼り付けたり、iPadのカメラで撮影した画像を貼り付けたりすることができる。さらにそれらの内容はクラウド経由で関係者に即座に共有したり、複数のユーザーによる同一図面へのメモを自動的に統合して表示したりすることが可能。メモした内容を帳票として出力することもできる。「これならいけると思いました。操作が簡単で、図面描画も高速。また、最新図面の管理も容易でした。」と、選定理由について池端氏は話す。
 
狙いは見事に当たり、若手のみならず全社的な活用が進んだ。「今では当たり前になった”iPadを施工現場に持っていく”という文化も、CheXのおかげで定着したと思います」という丸岡氏の言葉からも、CheXの貢献度が伝わってくる。
 
 

現場への想いが生んだ「LAXSY」

CheXによる成功を下敷きに、次に取り組んだのが「仕上げ検査」だった。当時は図面と指摘記入欄が一体となった用紙を持ち、そこへ指摘事項を手書きでメモをしたりデジカメで撮影したりしながら検査していたが、この検査工程の負荷が当時は非常に高かったと言う。特に大規模な集合住宅となるとその量は膨大になる。「マンションは一生に一度の買い物と言う方も多い高額商品。わずかな傷や汚れも見逃せません」という池端氏。都心部のマンションの例では、自主検査時の指摘事項が1戸当たり100を超えることも。それが部屋の数だけ存在するのだから、気の遠くなる作業量だ。それを終えても、今度は複数人で手分けして検査した内容を一つの書類に統合し、そこから10〜20社ほどの複数の協力会社ごとに「指示書」として出し分ける、という途方もない手作業が待ち構えている。膨大な作業量に、さらに追い打ちをかけるのが時間の制約だ。日光の加減で気が付かない壁クロスのムラもあり、日没を待ってから懐中電灯を当てて検査を行う場合もあるため、限られた時間内に効率よく検査することが求められる。
 
膨大な作業量と時間との闘い。それらの負担は、特に検査業務に未熟な若手ほど重くのしかかっていた。「黙って見ていられなかった」と、現場に配属されていた当時のことを池端氏は振り返る。
 
もちろん当時も改善に向けてPDA(携帯情報端末)を活用したり、市販のアプリケーションの導入も検討したが、どれも一長一短で、実務で使えるというリアリティさに欠けたため、CheXで実績のあったYSLソリューションと、ゼネコンのノウハウが詰まった仕上げ検査専用アプリ「LAXSY」の共同開発に踏み切った。
 
LAXSYは、よくある指摘事項をあらかじめ登録しておくことで、現場ではタップして選択するだけで指摘事項が入力できる。「不要な操作がなく、サクサクと簡単に使えることにはこだわりました」と、その高い操作性に丸岡氏は自信をのぞかせる。またそれらの指摘事項には是正を担当する協力会社が紐付けられているため、「指示書の出し分け」が自動的にできてしまう。
 
その導入効果は明らかだった。とある現場で活用した結果、従来は紙ベースの「指示書」を作成するのに2時間以上かかっていたのが、「LAXSY」を導入したところ、印刷をするだけなので約5分で完了したのだ。「これだけの成果を出せるアプリなら、自社だけでなく業界全体でも使えるし、アプリとしての完成度もより高められる」(池端氏)との想いから、他社でも使用できるよう、開発元のYSLソリューションを販売元としてLAXSYは一般リリースされた。
 
 

現場の声から生まれた「AQuick」

2つの施策が奏功しても、両氏はその手を緩めない。次に着目したのは、「安全・品質」に直結する日常点検業務だ。協力会社への口頭による是正指示は、どこにも記録が残らないため、伝えたはずが伝わっていないというリスクを孕む。「現場では、LAXSYを使えないかと試行錯誤していましたが、仕上げ検査を目的に作られていたため難しかった」(丸岡氏)ということもあり、毎日の日常点検で使える新たなツールの開発が求められていた。また同時期に、巷では「音声認識技術」が実用レベルになり、情報の入力スピードを圧倒的に早められると社内でも注目されていたことから、それらを盛り込んだ新アプリの構想が進められた。
 
「開発を担当するYSLソリューションと議論する中で、業界を超えて似た課題を抱える他社でも活用できることに気が付き、趣旨に賛同する企業の声を集めながら、完成度を高めていきました」(池端氏)。こうして開発され、LAXSY同様一般にリリースされたのが「AQuick」だ。
 
AQuickは指摘事項を関係者とすぐに共有できる巡回点検支援アプリ。アプリ内で開いた図面上に「指摘ピン」を立て、そのピンにテキストや写真、音声によって指摘事項を登録すると、瞬時に是正担当者や関係者とチャットで共有できるのが特徴だ。また、ピンの色は是正状況によって変化するため、是正状況が一目で把握できる。「伝わらない」リスクを低減させるための工夫が随所に盛り込まれている。
 
丸岡氏の所には「外出して現場にいなくても、外出先から是正状況をすぐに把握することができるようになり、とても便利になった」という声が、現場から届いているそうだ。ただ池端氏によるとAQuickはこれで完成形ではないという。「将来的には、蓄積された指摘事項と建物形状の情報を分析すれば、“こういう形状の設計は品質不具合につながる可能性が高い”等の情報を、設計にフィードバックすることができるかもしれない。そこまでの可能性を秘めたアプリ」であると、そのポテンシャルに期待する。
 
  
   図面共有アプリ      仕上げ検査支援アプリ     巡回点検支援アプリ
    「CheX」         「LAXSY」          「AQuick」


 

まなざしは、常に現場へ

これだけの成果を次々と挙げる池端氏と丸岡氏。同課のミッションについて尋ねると、池端氏は「建設業にとって、施工現場は最前線。その最前線で働く従業員や協力会社、職人の皆さんにとって、いかに気持ちよく、安全に働ける環境を提供できるかにフォーカスしている」と話し、丸岡氏も「 “戸田建設の現場は働きやすいね”と言われるために、必要なことは何でもやるチームですね」と応じた。
 
かつて業界には、自分たちが経験してきた「3K」と表現されるような苦労をすることこそが、若手に必要な勉強だとする風習もあったという。「しかし、必ずしもそうではない。先輩たちが苦労してきたことを、できるだけ今の若手にはさせたくないという強い気持ちがあります。それが会社やひいては業界全体の進化や魅力の向上につながると考えるからです」(池端氏)
 
自社のみならず業界全体の未来をも見据えた、戸田建設の取り組み。今後も目が離せない。
 
 
 


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