3D都市モデルデータ/広域3次元モデルデータ
株式会社 奥村組
管理本部 情報システム部BIM推進室BIM推進グループ(大阪)日野 元 氏
管理本部 情報システム部BIM推進室室長 兼 BIM推進グループ長(大阪)脇田 明幸 氏
(左から)
所在地:大阪市阿倍野区
創業:1907年2月
資本金:198億円
従業員数:1,967名(2018年3月31日現在)
主な事業内容:総合建設業およびこれに関連する業務
株式会社奥村組 管理本部情報システム部BIM推進室では、全社に対しBIMを活用した業務フローの提案、推進を行っているが、ここで欠かせないものとなっているのが「3D都市モデルデータ」と「広域3次元モデルデータ」である。両地図データは、具体的にどのような活用がなされ、奥村組の業務に役立てられるとともに同社の先進性を支えているのか。BIM推進室の脇田室長と日野氏に話を伺った。
はじめに
当社の管理本部情報システム部BIM推進室では、およそ3年以上前から『3D都市モデルデータ』と『広域3次元モデルデータ』(以下、2つ併せて「3D地図データ」と表記)を導入し、全社的に3D地図データを活用したBIMを推進しています。活用する3D地図データをゼンリン様のものに決めたのは、汎用性の高さです。より多くのソフトで地図データを読み込めることと、必要に応じたデータ加工がしやすいというのは大きな利点です。現在では、社内における企画・計画からお客さまへのプレゼンや工事現場での打合せまで、多くの場面で活用しています。
3D地図データはBIMとセットで使用していますが、どの場面においても「現実さながらのリアルさ」が、業務効率や業務レベル、お客さまへの訴求力を底上げすることにつながるため、周辺環境もリアルに表現することが求められます。導入する前は、必要に応じて紙ベースの地図情報から建物データを作成していたので、手間とコストがかかっていました。この点でも、効率化を果たせていると思います。3D地図データが「すぐに使用できる環境」にあるというのはありがたいと思います。
社内から工事現場まで、幅広い場面での活用が可能
当社では3D地図データを使用したBIMを、施工計画を検討する打合せなどで使用しています。社内での打合せにおいて、参加者が周辺環境を瞬時に把握できることは、情報共有の正確さと効率化に大きく寄与しているといえます。周辺環境の把握のみならず、エリア全体の風の流れを可視化する流体解析や日照シミュレーションなどにも使えるので、活用の幅は広いですね。
さらに、工事現場での活用も効果的です。重機の専門工事会社などとの打合せに使用することで、周辺環境への影響を的確に考慮した上で工事計画を作成し、実施することができます。地図データに道路標識などが入っていれば、工事車両の運行計画もイメージしやすいですね。加えて、新しい作業員に周辺環境を説明する場合にも速く正確に情報を伝達することができ、時間の短縮にもつながっています。

駅前ビルの施工計画に利用

奥村組九州支店(東側が傾斜地である敷地モデル作成に利用)
「お客さまをワクワクさせる」という至上命題にも対応
お客さまである発注者への説明やプレゼンにも、もちろん3D地図データを活用しています。当社のお客さまにはデベロッパーや工場、病院、ホテルなど実にさまざまな業種・業態の方がいらっしゃいますが、全てのお客さまに対してプレゼンをするにあたって必要なことは、「計画の魅力を伝える」「ワクワクさせる」「正確で詳しい情報を伝える」ということであると思います。その中で「建築物が一体どのような場所にあるのか」「周辺環境とどのように調和しているのか」ということをリアルに伝えることはとても大切であり、3D地図データの存在はとても役に立っています。
プレゼンの準備期間が1週間程度しかないケースもあり、導入前は3Dで周辺環境を表現することが時間的に難しく、平面地図にすることもありましたが、今は「最初の3D地図データを使用する」ことができるので、非常に効率良く対応できるようになりました。さらに、プレゼンにおいて動画を使用することは訴求力の向上に効果的ですが、3D地図データは動画でも使用できるので、動画でのプレゼンの場合は必ず使用しています。やはり、見栄えが違いますね。

奥村組広島支店(サインの視認性確認に利用)

奥村組阿倍野寮(街並みに配慮した外観検討に利用)
活用頻度が高まる「VR」にも欠かせない
現在、当社ではお客さまへのプレゼン時などにおいてVR(バーチャル・リアリティ)の活用に力を入れていますが、ここにも3D地図データは欠かせません。本体建物と周辺環境をより実物に近い形で見ていただけますし、「建物の中から外がどう見えるのか」ということも設計時に確認していただくことができます。もちろん、建物の異なる階や場所からの風景の変化にも対応します。さらに、例えばホテルの運営会社様などは「できあがったホテルが駅からはどのように見えるのか」ということも重要視されますが、周辺環境の3D地図データがあれば、VRを利用してこちらもリアルに体験していただけます。このように、景観シミュレーションにおいても、非常に有効に活用できています。
当社は2018年1月28日より4年間「大阪国際女子マラソン」に協賛し、大会当日に企業ブースを設けて一般の方へ建設業の魅力をVRでPRしています。VRコンテンツでは、当社の本社がある天王寺周辺の施工物件を3D都市モデルデータ上に配置して紹介しています。

大阪国際女子マラソンの企業ブース(BIMを含めた最新技術のPR)
私たちの想像力に応えてくれる存在、それが3D地図データ
今後に関しましては、現在の延長線上の使用を続けていくだけでなく、より気軽に、日常業務でも地図代わりに使用していきたいと思っています。お客さまへの現場案内地図など、使用する場面は多いと考えています。また、当社ではドローン視点で竣工映像を撮影するという取り組みを行っていますが、ドローン視点の映像は各種プレゼンなどにも取り入れていけると思います。ここでも、3D地図データの存在は欠かせないでしょう。3D地図データの今後の展開としましては、「一つひとつの建物の外観や高さを、より実際のものに近づける」ということが望まれます。そうすれば「地図≒現実」という、それこそVR時代にはなくてはならないリソースになるのではないかと思います。
私たちは日々新しい表現方法を模索していますが、これに応えてくれる存在が3D地図データであると考えています。

天王寺周辺の当社施工物件の紹介に利用
最終更新日:2019-04-22
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