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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

梓設計のBIM

株式会社 梓設計

ArchiCAD


会社概要 株式会社 梓設計
所在地:東京都品川区
資本金:6,000万円
従業員数:378名(2011年12月1日現在)
創業:1946年10月
事業内容:都市計画・地域計画、調査・企画、コンサルタント、設計、工事監理、 トータルマネージメント、デジタルデータ作成関連 ほか


情報システム部部長_柴峯一廣氏(株)梓設計は、今年創立65周年を迎えた総合設計事務所。「東京国際空港国際線旅客ターミナル」や「埼玉スタジアム」など著名作品を多数手がけ、高度な技術力には定評がある。同社は早くからBIM導入にも取り組み、昨年は国土交通省初のBIM採用を条件とした試行案件「新宿労働総合庁舎外設計業務」公募型プロポーザルに応募・選定された。

情報システム部 部長 柴峯 一廣 氏 

はじめに

 設計者の経験や記憶に頼って図面情報を関連付ける時代が終わり、コンピュータにその情報を整理させる時代に入った。コンピュータの中に仮想の建物モデルを構築し、必要な時に最適なフォーマットで情報を取り出す。2次元、3次元、リストといった形式に捕らわれず、食い違いのない整合性のとれた情報が得られる。
 またその情報を関係者間で共有することも、多方面からシミュレーションすることも可能になった。
 待ち望んだ設計環境であるが一方で乗り越えるべき課題も山積している。多忙な設計者にいかにその魅力を伝えるか。過渡期における社内体制をどうするか、図面表現の再考、オブジェクトの供給・自給方法、フォーマットの選択など自社で解決できる問題から建築業界全体を巻き込む悩ましい問題まで多くの課題を抱えている。

図書館保育所

梓設計のBIM

「設計事務所のためのBIM」を追及。それは何よりまず質を上げるためのBIM
 設計手法が変わりつつある中でBIMにおいても「設計者にとって何が大切か」を忘れずに現状可能な技術を取り入れていくというのが今のスタンスである。BIMソフトの初心者であっても「可視化」と「シミュレーション」の操作は比較的容易に理解できる。これを第一段階と考え、操作に慣れた設計者は次のフェーズ「図面の不整合をなくし品質を高める」干渉チェックである。「オブジェクトの作成」「数量の算出」「リストの作成」「プロジェクトの管理」とBIMで習得する内容は多岐に及ぶ。
 BIMソフトの操作が簡単ではない(正確に言うと覚えることが多すぎる)現状、進めば進むほど敷居が高くなり組織全体のレベルアップが難しくなる。今は裾野を広げることを優先に、平行して環境の整備を進めている。この間、初心者をサポートする「チームワーク機能」は効果的である。

BIMに最適な「図面表現の再考」
 設計者の作ってきた図面は実物をただ縮小して描いてきた訳ではなく、記号の集まりに置換えられ描かれてきた。所属する組織や設計する施設の規模、用途によっても表現が異なる。BIMソフトから生成される図面に従来の「みばえ」を全てに期待するのは難しく下手に追求すると無駄な労力がかかってしまう。BIMソフトの欠点という声もあるがBIMに適した「図面表現の再考」も次のフェーズに進む重要なテーマと考えている。

顧客満足、設計品質を高める
 BIMソフトを使ったいくつかの業務の中で設計者が有効と感じている機能がある。3D - CADとBIMソフトの大きな違いは3D-CADが初めから3次元を意識して設計するのに対して、BIMソフトは必要に応じて2次元と3次元の間を行き来できることにある。面積や高さといった与条件から構成される形状を立体で確認しながら、法令による条件を加えボリュームを再度見て2次元の図面に反映するといったことができる。つまり従来「カンや記憶」に頼っていた部分や2次元の図面情報だけに頼っていた部分をソフトウェアが補ってくれるのである。
 その過程を、プロジェクトのメンバーで共有することも、顧客を巻き込んで検討に参加してもらうこともできる。関係者間の頭の中に描いていたイメージが可視化され短時間に共有できるので決定するまでの時間は当然短くなる。
 また、3次元化し、あらゆる方向から検証することで、気付かなかった部分が発見でき現場まで持ち込んでいた不整合がなくなり図面の品質も高まる。各種シミュレーションや多くのパターンを同時に検討できるなど、BIMのほんの一部の機能であるが設計者にとってはとても魅力のある機能である。


設計者によるボリュームの検討断面

BIMオブジェクト
BIMオブジェクト(ホームページへのリンク、図面の自動作成などBIMオブジェクトには無限の可能性がある)
オブジェクト提供 3D工房

今後の展望

 オブジェクト指向の設計手法は産業界全体を巻き込んでさらに進化を遂げると思われるが、「データの標準化」という点では、ベンダー側に頼る部分が大きい。この点はかなり懐疑的であるが、ベンダー側も利益追求に流されず、利用者の立場を考えた対応をして欲しい。仕様がオープンであればBIMは急速に広まる。

BIMオブジェクトへの期待
 BIMオブジェクトはCADの部品と違いプロパティにあたる属性の他に振る舞いに当たるメソッドの定義ができる。部品が置かれた条件によって自らの形状を変えたり、アラートを出すなどの機能である。とても強力な機能であるがBIMソフトによって仕様が異なりデータ交換の際にその機能は失われる。せめてこの部分だけでも共通フォーマットにして欲しい。

BIMマネージャの育成
BIMマネージャ例 海外で実績を上げている事務所からは当たり前のようにBIMマネージャの話題を聞く。階層を持ったBIMマネージャの例もあり、プロジェクトの結果を左右するのもBIMマネージャ次第、プロジェクトごと現場にも必要という話である。確かにBIMを推進するにあたってキーマンとなるプロジェクト全体を把握できる技量を持った設計者、新たな職能が要求される。この地位につける技術者の育成が急がれる。設計事務所にとって重要なことは、一貫性のある、より良いデザインを行うことであり、それをいかにして不整合のない形で正確に施工者へ伝えていくか
 組織から出てBIMデータを流通させる場合、互換性が重要になる。この部分は自社努力で解決できるものではなく、建設業界、ソフトウェア業界全体で協力し解決しなければならない。また、設計フィを含めた業界体制の見直しも避けては通れないと考えている。






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