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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

河川点検の事務処理を大幅軽減 効率化がもたらした新たな河川管理

長野県 建設部 河川課

情報共有ASPサービス「basepage」

長野県 建設部 河川課

担当係長 村松 賢一 氏(左)
主査   北沢 辰美 氏(右)

 
長野県は、河川管理延長が4,803kmあり、北海道、新潟県に次いで全国第3位の河川延長を誇る河川大国である。源流が多く、日本のほぼ中心から日本海に注ぐ信濃川や太平洋に注ぐ天竜川、木曽川等8水系を擁すが、急峻な地形や脆弱な地質といった自然条件に加え、都市化の進展による土地利用の変化で流域保水力が低下したことから、水害も少なくない。こうした多数の河川を管理する長野県建設部河川課の村松氏と北沢氏に話を聞いた。
 
 

河川法改正で業務量増大

 
平成26年3月、河川数:737河川、河川延長:4,803kmを管理する長野県にとって、ターニングポイントとなる出来事があった。河川管理施設を良好な状態に保つよう、管理者の維持・修繕が義務化された河川法改正による点検業務である。
 
法律では、一年に一回以上の適切な頻度での点検、損傷や腐食等の異状把握時の措置の実施、点検結果の記録や保存などがうたわれた(以下「法定点検」という)。これを受け、国土交通省から具体的な実施要領として「中小河川の堤防等河川管理施設及び河道の点検要領」(以下「点検要領」という)が示された。
 
「この法改正により、業務量がぐっと増えました。これまで、河川パトロールや出水後の点検などは行ってきましたが、さらに、法定点検が追加となり、現地機関の負担が大きくなりました。
何より、点検した結果を記録に残す作業、いわゆる内業が大きく増加することとなりました」
 
これまでは、異常箇所があれば、写真を撮って担当者に報告し、必要に応じて修繕を行っており、その履歴を体系的にまとめる台帳等は特に作成していなかった。点検の記録を残し、それを書類にまとめるといった作業は、まるまる上乗せされるものだ。
 
「限られた人員、限られた予算の中、職員だけで法定点検を行わなければならない。何か、現地担当者の負担の軽減策を考えるしかない。と考え、システム化の検討を始めました」 
 
現地に赴く点検作業そのものはなかなか省略できない。そうなると、何を省力化、効率化できるか。記録のまとめと報告をシステム化する方向で、情報収集を始めた。
 

 
 

仕様は自分たちで策定システム化の最短ルート

 
関東地方整備局関東技術事務所で開発したDBシステムを見学したり、他県の事例を見聞きしたりして、知見を広めながら徐々に自分たちのやりたいことを固めていった。それを、長野県の体力に見合うコストで実現できるかがポイントとなる。
 
「どういうことを、どんな風にやりたいかは、われわれの中である程度具体的に思い描けていたので、仕様から全て委託開発するのではなく、仕様書は自分たちで作成しました。そしてこの仕様書に合ったシステムを既に具現化しているシステムはないかという観点で探しました。」 
 
そこで、公募型プロポーザル入札方式により選定されたのが、「basepage」(開発:川田テクノシステム株式会社)を使った河川管理システムだった。
 
 

帳票出力が大幅に省力化

 
こうして、平成26年に検討を開始した河川管理のシステム化構想は、平成27年仕様書策定から発注に至り、平成28年4月から、本格運用が始まった。システムの概要は以下の通りだ。
 
現地点検
 
点検箇所の写真をスマートフォン等のモバイル端末で撮影し、basepage(データセンター)に送信すると、送信データから位置情報を特定し、システムの電子MAP上にプロットされる。また、その場で所定の項目に点検結果を入力していくだけで点検項目が網羅できるため、記入漏れもなく、精度の高い点検が可能。
 
もちろん事務所に戻ってからの入力や修正も可能だ。
 
帳票の取りまとめ
 
撮影した写真や点検項目は、各種帳票形式にレイアウトして出力(Excel形式)が可能。
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「取りまとめの帳票はExcelで作っていました。入力は直接行わなければならないし、写真も貼り付けなくてはならない。異常箇所を図面に記入する作業もExcel上で行っており、現地の点検よりもExcelへの入力作業にストレスを感じているという、現地機関からの苦労話や苦情を多く聞きました。
 
システム化により入力項目も決まっているし、次へ次へと進めていくだけなのでかなりラクになりました。現地担当者からの評判も上々です。
 
もちろん、実際に使ってみないと分からない部分はどうしてもあるので、システムの改良を柔軟に対応してもらえるかは大きなポイントとなりました」 
 
システム導入から5カ月経過した9月、現地機関の各担当者とシステムのメーカーを交えてシステムに関する課題の洗い出しを中心とした意見交換会を行った。そこで出た操作性改善等の要望に対し、随時システムをブラッシュアップしているという。
 

 
 

作り込まない「柔軟な対応性」

 
「点検要領が出て以降、国も毎年帳票仕様の見直し等、点検要領の改訂があるため、地方自治体にも柔軟な対応が求められます。重厚長大なシステムを作り込んでしまうと、ちょっとした修正にもかなり時間がかかり、使用が定着しないままシステムが陳腐化してしまうといったケースをよく聞きますので、スピード感のある『使用→見直し→改善』の繰り返しが必要です」
 
また、Webを利用したASPサービスであることも負担軽減になっていると言う。     
 
「OSの入れ替えやサーバーのメンテナンス等の心配がなく、セキュリティ面のケアに煩わされることもない。予算も人員も限られていますので、こうした負担がないということは、実はすごく大切なんです」
 
<長野県河川管理システム>
 

モバイル端末から送信された情報をWebGIS上に展開

 

各種帳票を自動的にレイアウト

 

長野県の河川情報を全て集約できるシステムに

 
法定点検では堤防がメインとなるが、長野県の場合は山間の急流等が多く、道路と兼用になっている河川施設等、危険と思われる箇所を、法定点検の箇所にプラスして点検を実施している。今後は、こうした点検データだけではなく、長野県の河川情報をすべてこのシステムに集約していく方向である。
 
システムの導入当初から、「河川施設点検」のみならず、「河川現況調査」、「長寿命化計画の進捗管理」、「緊急報告」についてシステム化を進めている。
 
最後に、今後の展望を聞いた。 「長野県の基図を電子MAP上に展開して、河川台帳を作っていきたいと考えています。今後、災害時や点検・修繕の記録がデータベースとしてたまっていくはずですので、傾向と対策も考えやすくなり、維持管理の優先順位を決めるのに役立ちます。修繕には予算が必要ですが、予算を積み上げる際の裏付けにもなる、ということです。
 
例えば、修繕箇所の記録が蓄積されることにより、次にどこが壊れそうかが推察できるかもしれないし、経過観察と判断された事象を経年的に定点観測していくことで、予防措置がとれるようになるかもしれない。
 
これまで、河川整備や維持管理のデータが揃っていないためにどうしても事後対応になってしまっていましたが、的確な判断で、災害を最小限に抑えることにつながります。
 
効率化を図ったら、防災につながった------これこそITがもたらす効果ではないでしょうか」
 



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